− 辞書 −
- まあこれ以外にも色々持っているのですが、ここでは単語をひく普通の「辞書」を中心に。

新明解国語辞典第2版 三省堂[1974]
我が国が世界に誇る独創的な辞典、世に知らぬものの無い超おもしろ辞書です。これひとえに編集主幹山田忠雄氏の方針にかかるものであります。その序に曰く、「思えば、辞書界の低迷は、編者の前近代的な体質と方法論の無自覚に在るのではないか。先行書数冊を机上にひろげ、適宜に取捨選択して一書を成すは、いわゆるパッチワークの最たるもの、所詮、芋辞書の域を出ない。」ここですぐに「パッチワーク」をひけば「つぎはぎ細工(創意のない辞書編集にたとえられる)」とあり、「芋」をひけば造語として「芋辞書-大学院の学生などに下請けさせ、先行書の切り貼りででっち上げた、ちゃちな辞書」とある。すごすぎる。日本語の辞書として「標準アクセント」を記載したおそらく初めてのものでもあります。最近の版はすっかり普通になってしまったという話です。

岩波古語辞典 岩波書店[1974]
手許のものは1984の初版第14刷。現在は版を改めているようです。日本語のタミル語起源説で一敗地に塗れ、「日本語練習帳」でリヴェンジを果たした大野晋さんが中心となって編纂した古語辞典。その最たる特徴は、動詞を終止形でなく連用形で見出しに挙げているところでしょう。例えば、「作る」という語の見出し語は「作り」。語の使用頻度からすると連用形が全体の6割、終止形は1割くらいしかなく、「連用形が動詞の基本形」であるのは「国語史的事実」だそうです。ラテン語辞書で動詞を不定形でなく直説法能動相一人称単数現在(facereでなくfacio)で見出しに立てているのと似ている? 「辞書は一語一語の出生、活動、老化、死という語の生涯の記録を読みとる場でなくてはならない」という大野先生の主張に基づき、語の「意味の根源」とその発展を子細に記述しています。最近古典を精読するような事がなくなったせいであまり出番がありません。ちなみに大野先生は、比較言語学もちゃんと勉強しなおし、考古学等も援用してタミル語説で再度リヴェンジを狙っているようですが、今のところあまり成功していないみたいです。

新字源第2版 角川書店[1968]
ごく最近は知りませんが、私が学生の頃は「漢文を読むための小型字典」としてはこれが最良でありました。日本語の熟語なんかほとんど気にかけず、ひたすら漢文解釈のためだけに編集されています。手許のものは昭和55年発行第155版。付録の「助字一覧」「同訓異義」は漢文ないし偽漢文の読み書きにすさまじく役にたちます。私この辞書の編者のうちお二方に習ったことあるんですよ。山田勝美さんと都留春雄先生。都留先生の史記講義おもしろかったなあ。

TIME版 The American Heritage Dictionary Dell Pbl.[1994]
TIMEのおまけで付いてきた辞書。この辞書、本文はなんてことないのですが、付録がすごい。"Indo-Europian Roots"と称して、印欧祖語の語根が解説してあります。例えば、"wed-"として"water"の意とあり、この語根がwater、wash、hydro-、winter、unda(ラテン語で「波」)、vodkaなどの語源となっていることが書いてある。付録だけ別にして売って欲しいよ。

韓日辞典 民衆書林-三修社[1983]
朝鮮語勉強しようと思った、否、思っているんだけどなあ。買ったけどほとんど使っていない辞書です。韓国の民衆書林が編纂したものを日本で三修社が頒布しているようです。手許の版は第9版[1990]。序文がいきなりハングルで全然読めません。しくしく。これでいつもオクサンにバカにされるのだ。オクサンは高麗書林の「精解韓日辞典」(日本版初版1972)を御愛用とのことです。

独和大辞典 小学館[1985]
総語数15万、用例17万という大辞典の名に恥じない辞書です。現在では新正書法に則った第2版が出ていますが、私のは初版コンパクト版総革装。私辞書は革装が手に入る限り革装を買うんですね。多少重いのですが、香りが違います。:-) 百科事典としても使えるまことに重宝な辞書。最後はこれを頼りにしていますね。Oxford-Dudenの方がいいという人もいますが、まあいいじゃないですか。ちなみに学生時代には「シンチンゲル」の三修社現代独和・和独を使っていました。私らの頃はシンチンゲルと木村相良しか選択肢がなかったですよ。最近は郁文堂のも優秀の由。

クラウン仏和辞典 三省堂[1977]
クラウンといえば河村重治郎さんの英和辞典が有名で、私もお世話になりました。語法のパターンを抽象的に記述した研究社の英和中辞典とかを使っている同級生を横目に、ひたすら用例で語法を記述するクラウンのページを赤鉛筆で真っ赤にしたもんです。もはや全然覚えていませんが。この辞書も同じような方針のようです。なにより見た目(活字のface)が英和辞典と同じでなつかしい。ちなみに幼稚園からフランス語を仕込まれる某一貫校を出た知人の話では、この辞書の帯に載っていた桑原武雄の推薦文を暗記するのが流行ったそうです。曰く「この新鮮な辞書の五人の編者の特色は、みな仏語の深い学識だけではなく、文学好きの繊細な精神の持ち主だということだ」云々。知人によれば、例文がなにかと「ロマンティック」だそうです。

Collins Latin-English English-Latin Dictionary Collins[1947]
古本屋で買った私の最初のラテン語辞書。所謂 GEM型の掌中辞書です。ずいぶんお世話になりました。特に「和羅辞典」がごく最近まで世に無かったので、English-Latinのほうを良くひきました。で、その後手に入れたのが、

羅和辞典 増訂新版 研究社[1966]
世にいう「田中羅和」ですね。明治の末頃にドイツ人の恩師から賜ったという"Festina Lente"「急がば回れ」という金言を大きな活字で黒々と記した序文を読むと、往事の古典学者の幸せな学究生活が忍ばれてほのぼのとするのであります。着手が昭和10年、初版刊行が昭和27年、まことに恩師の金言どおりの着実なお仕事なのであります。この辞書の良いところは、初学者のために主な動詞の変化型を見出しに上げてくれていることです。ま、羅和辞典は他に選択肢ないですからね。

ギリシャ・ラテン引用語辞典 第7刷 岩波書店[1963]
この辞書はちょっと毛色がちがい、ギリシア・ラテンの古典から多少とも世に知られる文句を集めて翻訳したものです。上記と同じ田中秀央先生と落合太郎氏の編集。序文には相変わらずFestina Lenteが連発されており、なんと申しましょうか、田中先生の恩師に対する敬慕の念が弥増しに伝わるのであります。

新約聖書ギリシャ辞典 増補改訂第9版 山本書店[1981]
新約聖書の語彙に限り約5800語を収録、用例は当然新約聖書のほか、文法書や註解書からもとっているそうです。著者は無教会系の方で、必ずしも専門家ではないとのことですが、塚本虎二、関根正雄、村岡祟光、八木誠一、蛭沼寿雄などそうそうたる碩学が協力しているようです。他の辞書を知らないので正しく判断はできませんが、私には充分に役に立っています。図書室でも採りあげています。

デイリーコンサイス独和辞典 三省堂[1982]、スタンダード佛和小辞典 増補版 大修館書店[1974]
携帯に便利な小型辞書。そのかみ欧州を5週間ほど「放浪」したときは役にたちました。その後も相当期間常時携帯して使っていたので、どちらも前小口が手垢で黒くなっています。しかし、こういう辞書はもはや流行らないかもしれない。電子辞書なるものが急速に高性能化してきたからです。ひとたび電子辞書を使い出すと、もう紙にはもどれません。

SONY DD-IC90
初めて買った電子辞書。英和和英のみです。小学館のプログレッシブ。小西友七さんが最初に作った傑作ですね。和英の方もユニークです。この電子辞書は、基本的にテクストリーダなので、語釈表示は階層化されておらず、紙辞書と同じ文章を順に閲覧するようになっています。いっぽう、最近の大抵の電子辞書はまず主な語釈の概要リストのみが示され、読みたい語釈に対して用例や成句を別に閲覧するようになっています。2001年頃に型落ち品を安く買いました。動作が遅くて、キーの入力に検索がついていけないのと、キーが押しにくいのが弱点。(どちらも次のモデルでは改良されているみたいですが。) 小さくてワイシャツの胸ポケットに余裕で入るのが利点。車中で英語雑誌などを読むときに重宝しています。外側はもうぼろぼろ。

Casio XD-V9000
3番目に買った電子辞書。(2番目はオクサン用に買たセイコー電子製のやつです。) 広辞苑、リーダーズ第2版、リーダーズプラス、ロングマン英英、ジーニアス英和和英(俗にG3と呼ばれるもの)、ロジェのシソーラス、漢字源などが収録されています。実用英語を読むにはリーダーズとプラスは絶対に欲しい。長らくどっちも収録されたものが無かったんですね。大修館のG3はプログレッシブと同じ小西さんの意欲作で語法解説が充実。シソーラスは私はたまにしか使いませんが、英語を書くオクサンには「絶対に必要」だそうです。その他に英語類語辞典とかロングマンのアクティベータ(語法辞典)だとか似たようなものが収録されています。学研の漢字源はまあおまけかな。薄型大画面で蓋に色つきカバーをつけられます。専用ケースも売っていて、私は本皮製のを買ってしまった。散財。主に職場で使用。

Casio XD CP-500
4番目に買った電子辞書。おそらく現状ではこれが究極の電子辞書ではないでしょうか。SDカードで辞書が追加できます。追加する辞書はCD-ROMで供給。内蔵ROMには広辞苑、リーダーズ2とプラス、G3と和英、ロングマン英英、英語類語、漢字源が入っていて、内蔵RAM用にロジェシソーラス、同アクティベータ、現代用語の基礎知識2003年版、英語学習ソフトが標準附属。私はこの他に外部SDカードにコンサイス独和和独、クラウン仏和和仏(いずれも別売り)を入れています。一応、これだけで英仏独の3言語の双方向辞書を携帯可能。音声機能も付いているのですが私には不要。ラテン語辞書、羅英でいいから出ないかな。朝鮮語も出れば言うこと無いが、キーボードが対応できない? 欠点はサイズが大きいことと、メモリ呼び出しに時間がかかるのか、各辞書の起動がおそい。キーへの反応も遅い。特にキー反応の遅いのはときどき腹立たしいときがあります。これもすぐに改良版がでるんだろうな。主に自宅で使用。

オルガン辞書 第2版 オランダCEOS[2000]
一応御約束ですのでキワモノを。オルガンに関する用語の辞典です。収録語彙はよく判りませんがおよそ1800語くらいか。カタルニャ語チェク語デンマーク語ドイツ語英語スペイン語エスペラント(!)フィンランド語フランス語ハンガリー語イタリア語ラテン語オランダ語ノルウェー語ポルトガル語ルーマニア語ロシア語スウェーデン語日本語。19ヶ国語の対照辞書です。国と地域によって様式が異なるオルガンならではの辞書ですね。日本語部分は本邦の代表的オルガン建造家が協力して編集しています。図書室でも採りあげています。